こちらのお店も仁王門通を毎日通りながら
いつも気になっていたお店です。
インドネシアやタイで学ばれた本格的な料理が味わえます。
好きが高じて暮らしたインドネシアで料理を教わる
小屋根にバリ島で買ったヤシの葉を巡らせ、仁王門通に東南アジアのムードをもたらす「ロータス」。
オーナーの大内佐和子さんは、就職先の京都の会社の社員旅行で訪れたバリ島を気に入って、その後何度もインドネシアを訪ねたが、旅行では飽き足らず、とうとう現地で暮らしている。
そこまで好きになった理由はいろいろあるそうだが、一番は「現地の方のあたたかな人柄ですね」と大内さん。
現地の女性たちからは料理も教わった。
帰国後は京都のアジア雑貨店に勤め、しばらくしてからは伯母の東京の店を引き継ぎ、そこでアジア料理店をはじめるために、拠点を移した。
大内さんにとって初めての飲食店経営となる店は、駅から少しある場所だったが、関西出身の客も訪れるなどファンもつき、都合6年の中で楽しくやれた。
京都へ戻るきっかけは、結婚と出産だ。しばらくは育児や家事に専念した。
仁王門通に「ロータス」をオープンしたのは2012年のことだ。
「じつは仁王門界隈のことはよく知らなかったんです。だけど調べてみると繁華街にも近くて便利だし、徒歩圏内に岡崎(左京区)もあるので今はとても気に入っています」。
岡崎は文化施設や動物園のある人気のエリアだ。岡崎でイベントがある日は、仁王門界隈にも人の流れがくる。
古い民家の内外観をアジア風にととのえた店は、仁王門通で異彩を放っている。
店内の様子がわかる開放的なつくりは、初めてでも気後れすることがない。
1階にはテーブル席とカウンター席を、靴を脱いであがる2階には板敷の座敷を用意した。
昔ながらの民家に残る急階段をあがった2階席は、子供連れの母親たちにも好評だ。
周囲に気兼ねすることなく本格的なアジア料理を楽しめる店は、そう多くないからだろう。
インドネシアとタイの代表的なメニューをランチで楽しめる
メニューには、インドネシアで教わった料理とタイの屋台を巡って覚えた味のアラカルトが並んでいる。
ランチは3種ある。
インドネシアの定番料理「ナシチャンプル定食」は、お皿の中央に盛り付けたご飯のまわりにおかず数種を並べる本場のスタイルを踏襲。
現地の香辛料で味付た海老や鶏肉には独特の風味があるものの、総じて食べやすい。
おかずの内容は日替わりだ。
ほかの2種はタイ料理。鶏肉がメインの「カオマンガイ定食」と、ライスヌードル焼きそばの「パッタイ定食」がメニューに並び、3種はいずれもまんべんなく売れている。
夜のアラカルトの内容は10月から少し変えるそうだ。
新しいメニューには、貸農園や2階のプランターで育てた胡瓜、空芯菜、タイのハーブやコブミカンの葉ももちろん使われる。
3年前から始めた野菜やハーブづくりは、大内さんのひとつの楽しみになっている。
「自分で育てたものを出すことに喜びを感じています。2階のプランターから摘んだばかりのハーブは、いきいきと新鮮です。これからはできるだけフレッシュなものを使っていきたいですね」
日本と東南アジアをつなぐ文化交流イベントも開催
混雑する時は手伝ってもらうこともあるが、普段はほぼ一人で切り盛りしている。
「料理をスタッフに任せるのは、じつは難しいんです。お客さんによって辛さを調整することもありますし、私がつくるロータスの味を気に入ってくださった方には、いつも同じ味を楽しんでもらいたいですからね」。
忙しく働く大内さんを見て、飲食業は大変と思うかもしれないが、本人はいたって幸せだ。
「育児などで一時期、飲食業から離れていた時は、早くお店を始めたくてうずうずしていました。私は本当にこの仕事が好きで、飲食業はこれまで経験したすべてのことが活かせると思っています」。
東南アジアのことを愛し、現地で暮らしたこともある大内さんのもとには、京都で飲食店を営む東南アジアの人や、外国語学校へ通う学生たちがやってくる。
彼らとの睦まじい関係は、はじめてバリ島を訪れた時から始まっているが、その縁をもっと広げ魅力を伝えようと、店内でイベントを開くこともあるそうだ。
「以前はここでバリ舞踊をみてもらいました。これからもイベントはやっていきたい。ささやかですが、日本と東南アジアの架け橋になるような取り組みをしていきたいですね」。
混じり気のない異国への思いは、実りのある文化交流をもたらすに違いない。
(構成・文/古都真由美 写真/からふね屋 古都真由美)
住所:京都市左京区仁王門通川端東入新丸太町41
電話:075-761-3202
営業時間:11時~14時半(LO14時)、17時~22時(LO21時半)
定休日:火曜
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