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京都仁王門上ル下ル

【閉店】カフェ飯感覚で女性ひとりでも気軽に立ち寄れる和風カレーの専門店【和とcurry しらべ】

残念ながら閉店されました。

堀尾武史
最近二条通にできたカレー専門店です。
てっきり個人オーナーが経営されているお店だとばかり思っていましたが、
お話を聞けば、ある会社の社員さんが新規事業で任されて立ち上げたお店でした。

青森のホテルの支配人から京都のカレー店シェフに配置転換

いつかは自分の店をもってみたい。料理を作ることも食べることも好きな人なら、一度は思い描くそんな夢を、2019年4月にオープンした「和とcurry しらべ」のシェフ浜田俊明さんも抱いていた。

和とcurry しらべ 看板
二条通川端を東へ150mほど歩いた先にある

青森出身の浜田さんは、11年間地元のホテルに勤務している。
ホテルの運営会社が、大阪で宿泊施設のマネジメントなどを行う企業に変わってからも、支配人として真面目に働き続けていた。
転機が訪れたのは、社内で飲食事業部立ち上げの話が持ち上がった時だ。
業態はカレー専門店。なんとそのシェフに浜田さんが抜擢されたのだ。

学生時代から食べ歩きが好きで、時には気に入った味を自宅でも再現していたという浜田さん。
寸胴鍋で時間をかけて作るカレーには自信があり、その評判は社内でも広まっていたそうだ。
しかし、そうはいっても調理場経験があるわけでなく、突然の異動に不安を覚えなかったのだろうか。
「不安どころか、むしろ嬉しかったです。会社員という立場で働きながら、まるで独立開業してカレー屋をはじめるような経験を積ませてもらえるなんて、願ってもないチャンスです。チャレンジできることが本当に嬉しかった。メニュー開発には、今まで温めていたアイデアをすべて出し切ろうと思いました」。
和とcurry しらべ カウンターに並ぶスパイス

和食のエッセンスを巧みに取り入れた京都らしい味を完成

会社に提案したのは毎日食べられるような、さらさらとしたカレーだ。ターゲットは女性。カフェのようにフラッと一人で入って、あっさりとしたカレーを食べて帰る。そんなシーンを社内のみんなで共有した。店舗も女性の視点に立ってデザインしている。

和とcurry しらべ 店内
店内は清潔感のあるシンプルさとホッとできる温かさが共存。
2列あるカウンター席がメインで、ほかに4人掛けのテーブルが2卓ある

味は和風でいくと決めていた。「カツオ出汁の風味とカルダモンの香りがマッチすると、ある時気づいたんです。日本人に馴染のある和食に本格的なスパイスを合せたら、どこにもないカレーが提供できると思っていました」。

シェフの仕事を甘くみていたわけではなかったから、メニュー開発にはそれなりの苦労を伴うことを覚悟していたが、プロと、料理がうまいアマチュアを分かつものは想像以上に大きかった。
「8割5分まで作れるんですが、最後の壁をクリアすることがとても難しかった」。

浜田さんを悩ませた壁とは、プロっぽさ。
「味や見た目の完成度、またそれをどんな時にも継続して出し続けること。お客さんに繰り返し食べてもらえるメニュー作りの難しさは、食べ歩きでは見えてこなかった世界でした」。

和とcurry しらべ「さらり」
「さらり」950円は、肉や野菜、刻んだ椎茸を含め煮のように炊き、水分がなくなってからスパイスをあわせキーマカレー風に仕上げている。
海苔や三つ葉、小梅をトッピングして見た目にも工夫した

試行錯誤の末にようやく完成したのが、「さらり」と「とろり」の2種だ。「さらり」は、カツオや椎茸の出汁で作るドライタイプのキーマカレー。別で添えられる出汁を後からかけて、お茶漬け風に味わうこともできる。

和とcurry しらべ「とろり」
「とろり」950円は和食の一品をカレーとドッキングしたメニュー。
香味オイルで仕上げスパイシーな風味が口中いっぱいに広がる

一方の「とろり」は、浜田さんの好物、手羽と大根の煮物でカレーを作るユニークな発想。手羽と大根をはじめに醤油ベースの煮汁で炊き、具を取り出してから鶏の旨味がしみこんだ煮汁でカレーを作る。味はしっかりめ。煮込んだ手羽はホロリとやわらかい。
「さらり」と「とろり」を一度に味わえる「とろりとキーマ」もある。

オープン後には、辛さをおさえた「ごろり」や、牛スジ煮込みと辛口カレーのコンビ「ぴりり」も加わり、現在は5種のカレーがレギュラーメニューとして並んでいる。風味づけになる海老ふりかけや自家製福神漬けも用意している。

和とcurry しらべ 自家製福神漬けと海老ふりかけ
自家製福神漬けと海老ふりかけはお好みで

地域の特色をいかしたカレーを今後も作り続ける

2020年から自宅も京都に構えた浜田さんは、今まで以上に地域に溶け込み、地元の人に愛されるカレー店を目指す。「青森に住んでいた頃、じつは京都も大阪も関西というくくりで見ていて、違いをよくわかっていませんでした。京都で仕事をするようになってからは、街のきれいさに目が向くようになりました。この街の人に求められるカレーを、今後も作っていきたいですね」。

常連客は日ごとに増えつつあり、地域に根差したカレーを旗印に掲げる飲食事業部は好スタートをきった。和食とカレーといった、カレーと何かを組み合わせるカテゴリーは、思いもしなかった展開を生むかもしれない。仁王門界隈でその一歩を踏み出した浜田さんたちの仕事に、今後も期待が膨らむ。

和とcurry しらべ 浜田さんと長谷川さん
今冬は青森の食材で作る期間限定カレーも提供するなど仁王門界隈の常連客に喜ばれるメニュー作りに励む浜田俊明さん(左)。
共に働くスタッフの長谷川志津子さん(右)は、自家製福神漬けのレシピを考案している

(構成・文/古都真由美 写真/からふね屋 古都真由美)

和とcurry しらべ
住所:京都市左京区二条通川端東入ル難波町216
電話:075-708-7440
URL:https://www.curryshirabe.com/
営業時間:11時30分~15時30分 17時~21時
定休日:水曜

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