2020年4月5日をもって閉店されました。
一時はテレビなどのマスコミも押しかける話題のお店でしたが
今では小さな子供さん連れのお母さんたちなども憩う
ゆったりとした空気が心地よいお店になっていました。
女性オーナーのライフステージにともなって店も変化
仁王門通沿いにバインミーの幟を立てる「CHIERIYA」は、製菓の専門学校で学んだ大城千恵理さんが約5年前にはじめたカフェ。
かつて八百屋が営まれた店舗の土間には、不揃いの椅子やテーブルが無造作に置かれ、小上がりの壁は大城さんの友人が自由に描画している。
何ともゆったりした空気に包まれているが、はじめた当初は様子が違ったそうだ。店舗スペースは現在の3分の1ほど。「当時はガツガツ働いていて、年中無休、夜の9時近くまで営業していました」と大城さんは話す。
ところが結婚、出産、子育てと、大城さん自身のライフステージが変わるに従って店も変化。訪れる客層も少しずつ変わっていった。
ベトナムでいくつも食べ歩き日本人に合う味を研究
高校時代にパティシエを目指し、卒業してからはケーキ屋で働くようになった大城さん。それだけでは飽き足らず、料理もやってみようと20代の初めから仕事をかけ持ちし、その後、友人女性と二人で洛北高校前(左京区)にカフェもオープンしている。
一緒にはじめた友人の結婚を機にその店をたたむことになった大城さんは、かつてのバイト仲間から持ちかけられた、仁王門通の八百屋の跡を仲間3人で借りて、それぞれの店をはじめないかという話しに乗った。
3店舗が同居するユニークなスタイルはメディアも注目。話題のスポットになり、大城さんの店だけになるまで、しばらくその状態が続いた。
新しい店では、2つの看板メニューを売り出した。ひとつはベトナム旅行ではまった、現地のサンドイッチ・バインミーだ。
作り方を研究するため再びベトナムを訪ね、「ほかのものがお腹に入らないくらい食べました」と、ハードな3日間の食べ歩き旅行を振り返る。
帰国後完成させたのは、自家製パテ(豚レバー)、いわしのトマト煮クリームソース、白身魚フライわさびマヨネーズ、干しえびオムレツの4種。
「現地ではお肉屋さんがパテとかハムをパンに挟んで売っているんですが、向うのパテはクセがあるので、それを日本人に合うようにアレンジしています」。
頬張った瞬間にパリパリパリッと軽い音を立てるパンは、卸専門店に特別に注文している。
もうひとつの看板メニューは酵素玄米だ。「酵素玄米は、玄米に小豆、塩、水を入れて炊いたものを、3日間蒸らして寝かせます。
寝かせている間に酵素が増えて、モチモチとした食感になるんですよ」。
酵素玄米は、発酵食品ならではの栄養に富んでいるといわれ、仁王門の住人にも好評だ。決まってそのおにぎりを買いに来る人もある。
酵素玄米におばんざい8種とメイン料理1種をつけるおばんざいプレートの担当は、大城さんのお母さんだ。
大城さんは「オープン当初はどこか肩に力が入っていて、料理も自分でつくって頑張っていたんですが、子供が生まれてからは、子供との時間も大切にしたいので、母の手も借りるようになりました」と話す。
休みなく働いた日々も見直し、不定休だが休みも設け、営業時間も短縮した。
小さな子供を持つ母親の視点も取り入れた店づくり
「たった5年でこんなにも人生って変わるんだと、自分でもびっくりしています」と大城さんは微笑む。
ここで店をはじめた時は、出産はおろか結婚もおそらくしないだろうと考えていた。
子供を持ってからは、小さな子供連れの母親がほかの客に気をつかって、思いのほか飲食店を利用しづらいことに気がついた。
そんな母親たちが集いやすいように、カーペットを敷いた小上がりには子供用チェアーも用意。ウエルカムの思いを伝えている。
お菓子づくりにも変化があった。「食物アレルギーのお子さんが思った以上にいることを知って、卵や乳製品を使わずに美味しくつくれるなら、それがいいんじゃないかと思うようになりました」。
テイクアウトもできる焼き菓子のほとんどは、卵や乳製品不使用だ。
母親の視点もプラスされた「CHIERIYA」は、小さな子供を持つ親たちのオアシス的な場になりつつある。ここでご飯やおやつを食べて、近くの公園や動物園で遊ぶ日々が、子育ての只中にいる人たちの思い出として刻まれるのだろう。
(構成・文/古都真由美 写真/からふね屋 古都真由美)
住所:京都市左京区仁王門通新間之町東入和国町370
電話:070-5344-6343
営業時間:9時~18時(LOは17時)
定休日:不定休
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