DTP全盛の今となっては、本来の意味では死語になりつつある「版下」ですが、意外と私たちは今でも何気なく「版下データ」などという呼び方で使っています。
版下とは?
本来「版下」とは、アナログ製版時代、紙台紙に写植や図版の紙焼き(印画紙)を貼付けてトンボや罫線などをレイアウトしたものの名称でした。この版下台紙を製版カメラで撮影し、印刷用のフィルムを作成していたのです。またDTP初期は、レイアウトが完成したデータを白黒で印画紙に出力し、それを版下として使っていた時代もありました。
アナログ時代の版下は、主に方眼が予め印刷された専用台紙にロットリングペンや烏口でトンボや必要なレイアウトに必要なアタリ罫などを引き、文字は、写植機を使って印画紙に焼いたものを切り貼りしていました。またこれも懐かしい言葉になりましたが、地紋などは「スクリーントーン」を版下に貼付けていました。これらの作業を総称して「フィニッシュワーク」という呼び方もされていました。
そして製版工程へ入稿する前に版下をコピーなど取って文字やレイアウトに間違いがないかを確認する作業が「版下校正」でした。今と違って製版作業に入ってからの修正は時間もコストも掛かり、納期に大きく影響したため、この版下校正でのチェックは非常に入念に行われていました。
また、版下台紙の上には、大抵の場合トレーシングペーパーが被せてあり、ペーパーの上から台紙をなぞるように製版に対する指示などが細かく書き込まれていました。
したがって、版下は、製版のための原稿であると同時に、設計図や作業指示書の役割も果たしており、発注者と製版の現場、さらにはその間を取り持つ営業にとって大事なコミュニケーションツールでもありました。
翻って、この原稿を書くにあたり、昔の版下を引っ張り出してきて眺めていると、現在データ入稿が当たり前になる中、原稿製作と製版作業の垣根が曖昧になり発注者、受注者双方とも版下時代より自分たちがやりとりする原稿に対して責任感がやや希薄になりつつあるような気がしました。