色校正とは、本印刷での色調を確認するための試し刷りです。
印刷はCMYKの4色で印刷することが主なため、再現できる色幅が限られています。
また、印刷する紙によって色が大幅に変わってしまうこともあります。
一般的に「白い紙」といっても、生成りのものもあれば青味があるもの、コーティングの有無などによってインキの発色が変わります。
昨今は印刷・製版作業工程のデジタル化による恩恵と景気低迷による予算削減のため、本紙色校正を出す機会がずいぶん減ってきました。
からふね屋では社内のプリンタと本番の印刷機による印刷物の間で発色の誤差を調整していて、社内のプリンタでも本番とかなり近いプリンタ校正を出力しています。
アナログ時代
アナログ時代の印刷・製版工程では、実際の印刷の色を事前に確認するためには、必ず印刷機で印刷する必要がありました。
ただし、本機(本番の印刷を刷る印刷機)で校正のために印刷するには現在よりも時間も手間も掛かり過ぎたので、校正印刷専用の平台印刷機を使うことがほとんどでした。
この平台印刷機は10枚程度の極小枚数の印刷に特化されている手動もしくは半自動の機械で、昔は校正印刷を専門にしている印刷会社がありました。(今でもなくなった訳ではありませんが、都心部に辛うじてわずかだけ残っている程度だと思います)
ですので、昔の印刷のワークフローは、以下のものでした。
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版下をコピーして何回か文字・レイアウト校正
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製版屋さんで製版し、分色フィルムを仕上げ
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校正用の刷版を作成
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校正機で校正刷り
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色校正
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修正指示に従い、版下や製版フィルムを修整
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青焼き校正などで修整を確認
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本番用の刷版を制作
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本番印刷
場合によっては、色校正が再校、3校、4校と繰り返されることもあり、またフィルム製版の後半期には「コンセ(コンセンサス)」と呼ばれるフィルムを色付きで直接プリントする簡易校正もありました。現在のデジコン(デジタルコンセンサス)の原型です。また、このワークフローでは、どうしても平台校正機(色校正を刷るための印刷機)と本番の印刷機では機械の構造の違いから印刷網点のゲイン値(太り具合)が変わってしまい、厳密には印刷結果が変わってしまうため、本番の印刷では刷版の焼き込み具合を微妙に変えるなど、製版・印刷職人さんの経験と技がものを言いました。
そのため最終的には本番の印刷機から出てくるまで本当の意味でどんな色味になるかわからない部分があったので、今よりも印刷工場での刷り出し立会の機会も多かったものです。
現在の色校正
ところが現在では、まずモニタ画面でも色が最初からある程度確認できますし、校正も最初からカラーで出すことが当たり前になり、その上、インクジェットやレーザープリンタでもいろいろな紙に印刷の色再現が可能になったため、色調再現の忠実さをよほど必要としない限り、本紙色校正の必要性が求められなくなってきました。
そして、校正刷りをする場合もCTPの時代になってほとんど本機で校正を印刷することが当たり前になったので、校正と本番の印刷条件がまったく同じになり、本紙校正の精度も格段によくなりました。
現在の主な色校正は以下に挙げたものです。
1. 専用紙に出力(校正用インクジェット・レーザープリンタ)
本番の印刷結果を使用する紙ごとに予めシミュレーションしてあるプリンタで近似色を出力
レーザープリンタの場合はA3ノビサイズまで対応、インクジェットの場合は大判も可能
2. 本紙に出力(校正用インクジェット・レーザープリンタ)
本番で使用する印刷用紙を使って、実際の印刷近似色をシミュレーションして出力
レーザープリンタの場合はA3ノビサイズまで対応、インクジェットの場合は大判も可能
3. 本紙で本機で印刷
本番と同じ印刷機で、本番と同じ面付で本紙に印刷するためほぼ本番と同じ結果が得られる
本番と同じ刷版を焼き、100枚程度の本番と同じ紙が必要なため、費用は他に比べ割高
※2016年3月にデジタルコンセンサス専用の感材も生産終了となったため、デジタルコンセンサスは感材の在庫がなくなり次第使用できなくなります。
どの色校正を選ぶかは、予算の都合と、あとはそれぞれの校正方法の「一長一短」を踏まえた上で、印刷会社の担当にご相談されたらよいかと思います。
さて、このように校正作業が以前にくらべて非常に簡単に行えるようになった反面、いつでも直せるという意識がクライアント側にも、現場側にも蔓延してしまい、そのため事前の準備やチェックが疎かになり、その結果、必要以上に校正の回数を重ねて、多大な時間と労力がかかってしまうケースも多々見受けられます。
そのため当然経費面への影響も避けられないものがありますので、入稿前にはしっかりと原稿を揃えて、校正の段階ごとに押さえるべきチェックポイントをしっかりとクリアしていくことが、結果的に安くて、早くて、美しい印刷物の完成への近道になります。
また、例えば画集・写真集・美術本・図録・ポスターや各種PR販促制作物など写真やビジュアル、デザインにこだわりを求める印刷物の場合、特殊な紙に印刷する場合、金・銀や特色で印刷する場合は、やはり本紙色校正で確認することによって完璧にイメージをつかむことができて、最終印刷物の精度はさらに大きく向上させることができると思います。