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印刷用語集

デザイナーとDTPオペレーター

こちらの記事は、旧サイト・ブログの記事を加筆・修正したものです。

デザイナーとDTPオペレーターの仕事の領域はどこまで?

現在の印刷のワークフローは、デザイン・レイアウトをもとにPC上でアプリケーション・ソフトを使って印刷用のデータに仕上げ、そのデータを出力したものを印刷する・・・、という形が主です。
そしてこの工程で、デザイン・レイアウトを行うのが「(グラフィック)デザイナー」の仕事で、印刷用データを作るのが「DTPオペーレーター」の仕事となるのですが、実際のところはその境目は非常に曖昧です。

DTPが主流になる以前の「アナログ」の頃は、デザイナーはデザイン・レイアウトを版下という製版のベースになる文字や線画、罫線やトンボを配置した台紙にして、画像用原稿といっしょに入稿するところまでが仕事で、その版下をもとに製版作業を行い、印刷用の版を作るのが、製版会社のオペレーターや印刷会社の仕事と明確に分かれていました。

ところが、デジタル化した現在では、デザイナーはそれまでの版下にかわりに、PCで作ったデータを入稿するようになり、また従来はポジフィルムや印画紙などで入稿していた画像原稿も、デジカメやスキャナーの発達で、直接データにレイアウトした状態で入稿できるようになりました。
つまり、(完全、不完全はさておき)デザイナーが一人ですぐに印刷用データを作ることも可能になったのです。

一方、例えば弊社の製作スタッフのように、印刷用データを作成できるDTPオペレーターのスキルに加え、デザイン・レイアウトもこなせる場合もあり、この場合も一人ですべての作業をカバー出来るわけです。
そのため、現状ではどこまでがデザイナーの仕事の領域で、どこからがDTPオペレーターや印刷会社の仕事になるのかが非常に分かりにくくなっています。

デザインの費用、DTPの費用

この問題は、単に仕事のスムーズな進行だけに留まらず、ギャランティーの問題を大きく関わっているだけに難しいと言えます。

例えば、印刷会社への入稿がそのまま刷版などに出力可能な印刷データ(通常、完全データと呼んでいます)という条件の見積りの案件で、

  • デザイナーが完全データを用意した場合、そのデザイナーはデザイン費に加え、DTPオペレーション費が請求できるのか?
  • 完全データとして入稿されたデータが完全でなく製版会社や印刷会社のオペレーターによる作業が必要な場合、そのフィーは誰が(クライアント?デザイナー?)負担するのか?

といった問題がありますし、単にデザイナーからの「データ入稿」という抽象的な表現で見積りを取り交わした場合、

  • DTPオペレーション作業の必要のない完全データなのか?
  • もしDTPオペレーション作業な場合は誰が負担するのか
  • そのフィーは見積りに含まれているのか?

といったところが常に問題になります。

クライアントにしてみれば、データのやり取りに関する知識はほぼ皆無なのが普通ですし、見積る側の印刷会社も見積り段階で「データ入稿」と聞かされていても、実際にデータを見てみるまではデータが完全か不完全かとか、あるいは単なるデザイン・レイアウト指示だけのデータなのか、がまったくブラックボックスの場合が多いのです。

デジタルワークフローは印刷品質を下げている!?

またアナログ時代は、デザイナーも製版・印刷会社も双方の領域の専門性が高く、職人的な世界があって相互不可侵な関係であり、なおかつお互いにある種リスペクトが感じられていたのですが、デジタル時代の現在は省力化、スピード化など様々なメリットを生み出した一方、それぞれの専門領域に簡単に踏み込めることによって、逆に印刷物としての高いクオリティが果たして維持できているのかという疑問も孕んでいます。
印刷のクオリティ自体は確かに相対的に向上していますが、レイアウトやデザイン、画像の美しさという点においては安易さが感じられる印刷が増えているように思うのです。

右肩下がりのクリエイティブ費とプリプレス費

そして、その現状に比例してプリプレス費(製版費)はデジタル化による省力化、効率化による効果以上の勢いで低価格化の一途をたどっていますし、デザイナーやカメラマンなどクリエイター側のギャランティも年々下落しているのではありませんか?

この現状を打破するためには、DTPオペレーターをはじめ印刷会社もさらにDTPオペレーション力や印刷の技術を磨くとともに、日頃から美的感覚やデザインセンスも取り入れる努力が必要ですし、デザイナーなどクリエイターの方々も完全データまで創り上げるスキルは必須ではないにしても、データで入稿するスタイルを取り続けるなら、デザインの意図がより反映された印刷を仕上げるため、DTPオペレーションに対する知識は最低限持ちあわせておく必要があると思います。

そうしてお互いが双方の領域のプロフェッショナルな部分を習得できるよう努力すれば、デザイナーもまたデザイン費と別にそのスキルに対する費用を計上することもできると思うのです。

そこで今回ご紹介するのが、エムディエヌコーポレーションから発刊されている「新詳説 DTP基礎」という本です。

【改訂四版】の発行から5年近く経っているため現在アマゾンでは中古品かKindle版しか入手できないうえ、やや情報が古くなっている部分もあるようですが、DTP全般についての基礎知識が非常にコンパクトにわかりやすくまとめてあり、これからDTPに関わろうとする初心者の方はもちろんのこと、編集やデザイン、カメラマンの皆様にもご一読いただきたいと思います。

そんなこと「初めから知っているよ」というような内容も多いとは思いますが、なかなか私達印刷会社の立場でもこの本の内容をすべて理解しているかというと、ちょっと心もとないところもありますので、広く知識を身につけるにはうってつけの本といえます。

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