実は歴史のある印刷通販
最近はテレビコマーシャルを流す企業も出てきて、印刷やデザインの業界以外の方にも認知度が上がってきたインターネットを使った「印刷通販」ですが、実は結構歴史があって、インターネットもデジタルプリプレスも普及していない約30年前には、ポストカードなどに特化して版下とポジフィルムなどの画像原稿を郵送して発注するシステムが既に存在していました。
その後、プリプレス(デザイン・版下作成・製版)のデジタル化の進展と、インターネットの高速化と歩調を合わせて、「印刷通販」は急速に普及してきました。
ところで「印刷通販」の魅力は何と言っても低価格、つまり安い!ということです。
それもアイテムにもよりますが、下手すると通常の印刷の1/5以下ぐらいもあり得るぐらいの圧倒的な安さで、特にサイズが小さく小ロットでの注文は、まったく通常の印刷では太刀打ちできません。
印刷ネット通販はなぜ安い?!
なぜ、それだけの低価格が実現できるかというと、
- ネット受付に特化することで、営業マンなどの人件コストがかからない
- 印刷可能なインキをプロセスカラーに限定し、かつ選べる紙の種類もある程度絞ることで複数種類の印刷物を同時に印刷する付合せ効果が高い
- 全国から受注できるので大量生産が可能になり、24時間設備を稼動させることができ償却コストが抑えられるともに用紙や版材などの仕入れも大量になるためコストが安くなる
などの理由が挙げられます。
印刷ネット通販のデメリット
ですので、安くて、速くて、24時間いつでも注文できると、良いことずくめのように思える「印刷通販」ですが、もちろんデメリットもまたたくさんあります。
- 原則として完全データ入稿が求められる
- 再発注(リピートオーダー)のとき色が合わない
- 対応できる印刷物の種類や紙の種類、印刷色が限定されている
- 印刷通販会社の都合で、突然サービスや価格の変更がある
- 機械でできる加工に限定されていて手作業が伴う特殊な加工には対応できない
- 色校正をとることもできるが、シビアな色合せは向かないうえ、修正などは自己責任で行わなければならない
1.の完全データとは、イラストレーターやフォトショップなどグラフィック系のアプリで制作され、なおかつ印刷現場の製版・出力システムでエラーにならず正しく出力され、色調もプロセスカラーのオフセット印刷の適性に則って制作された入稿用データのことです。間違いなく、きれいな仕上がりの印刷物に仕上げるためには、このデータ作成にある程度専門的な知識が必要とされます。
2.の理由としては、発注のたびに印刷する機械が違っていたり、他の付合せされる印刷物との兼ね合いによって、どうしても色調や色濃度など色の再現性にバラつきがでてしまいます。そのため、発注のたびに商品の色が違ってしまうケースが避けられません。一方通常の印刷では、原則としてその商品のみを印刷する上、前回の見本と見比べながら調整を行いますので、色の再現性のバラつきが非常に小さくできます。
3.については、ファンシーペーパーなどの特殊紙を選んだり、特色による多色刷りやプロセスカラーと特色の組み合わるなどの指定は印刷通販ではほとんど対応できません。
4.は先に見積りだけサイト上で確認して、そのあと時間を置いて発注しようとした時や、リピートオーダーの時など、その間に価格が改訂されていたり、サービスそのものが無くなってしまっているケースも多々あります。
5.は例えば例えば最後の加工が機械で対応できなくて手仕事が必要なケースなどは、別途加工だけ内職加工屋さんなど別の業者に頼む必要があります。
6.については、2.とも関連するのですが、例えば印刷の立会が必要なようなシビアな色調整を求められる印刷物はもちろん「印刷通販」には発注しないでしょうし、また「印刷通販」の場合は色校正をとった時、その色が気に入らなかったときは自分でデータを修正して再入稿しなくてはならないうえ、それでも本番で思い通りの色にならない可能性も十分にあります。その点通常の印刷であれば、営業やプリンティングディレクターなどが適切なアドバイスをしてくれたり、現場サイドで修整(有料の場合もあります)してくれたりします。
印刷ネット通販に向いた印刷物
したがって、このようなデメリットを見ていくと、印刷ネット通販に向いた印刷物には、
- 小ロット
- 紙質や仕様にあまりこだわらない
- 単発(リピートが発生しない)で製作
- 厳密な色合いを求めない
といった条件が当てはまります。