通常、再版つまり、リピートオーダーがある可能性のある印刷物の場合、印刷会社ではその印刷物の版を一定期間保管しておくことが一般的です。
印刷の技法と版の形態
ちなみに印刷の版とは印刷技法によってその形態は異なります。
- 活版印刷の場合は、凸版や紙型それに端物の場合は組版のまま保存しておくこともあります。
- スクリーン印刷の場合は、ポジフィルム、非常に再版頻度が多い場合はスクリーン版で残しておくこともあります。
- オフセット印刷の場合は、以前はポジフィルムやネガフィルムで保管していましたが、現在はCTP(データから直接刷版)が主流のため、データで保存していることがほとんどです。
- 箔押の場合は凸版や金版
- 印刷以外ではトムソン加工(打ち抜き)は抜き型の木型で保存
また、アナログ製版時代は、製版フィルムや凸版をつくるための版下も保存の対象になっていました。
オフセット用刷版は感光のためすぐに劣化しますので保存はしません。
印刷の版の所有権
ところで、時々この印刷の版で問題になるのが所有権、すなわち版は発注者か、印刷会社かどちらのものかという議論です。
この問題が往々にして起こるのは、なんらかに事由で発注者が印刷会社から版の引取を要求されたときです。
発注者の方の立場からしてみれば、印刷会社が発注者に見積書や請求書を発行する場合、よく版代とか製版費あるいはデータ費などの項目を印刷費用と別途に計上していることが多いことため、お金をちゃんと払っているのだから自分のものだと思われてしまうのが原因のようです。
ところがこの版代や製版費、データ費は、あくまでも版やデータを製作するためにかかった手間に対する製作作業料の請求であって、版の所有権までは含まれておらず、したがって出来上がった版やデータは制作側の成果物であり、版の所有権はあくまでも製作した側にあるのです。
このことは法律的な裏付けもあり、また実際の裁判の判例も多数あります。
ただ所有権はあっても発注者の許可無く他の印刷物にこの版やデータを使用することはもちろん出来ません。
とういうことで、もしお客様から版やデータの引渡しを要求されても、印刷会社としては原則としてはお渡しすることはできないのですが、原則論はそうであっても実際の個々のケースでは、あくまでも2者間の取引の問題ですので、契約上双方の同意があれば引渡しも可能であることも申し添えておきます。
版の保管は無償サービス!?
また版やデータの保管は双方で特に取り決めがない場合は特に義務が発生しているわけでもなく、あくまでも商慣習や制作側の善意やサービスであって、相当年数のあいだ再版発注のない版やデータは、発注者に通知することなく処分されるケースも多く、特にグラビア版やトムソンの木型などは形状が大きいため保管コストの問題もあり、比較的短い期間で廃棄処分になりますので注意が必要です。
最後に弊社の版・データ保管に対するスタンスですが、
- 弊社で製作したデータについては現在原則として10年間はバックアップも含めて2〜3重に(もちろん無償で)保管いたしております。
- 10年以上経ったデータについても物理的に可能な限り保管いたします。(但しバックアップはいたしません)
- 活版用凸版やオフセット用製版フィルムに関しましては、今後対応が困難なため、原則としてデータでのみの保管とさせていただきます。
- 版の製作も含めた外注製作案件については原則として外注先の規定に依存しますが、極力保管してもらえるよう外注先にはお願いしています。
- 特に保管条件が付帯する場合は予め見積もりの段階でお知らせいたします。
その他不明な点はお気軽にお問合わせください。