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京都仁王門上ル下ル

芸大出身のオーナーが現地で買い付ける北欧アンティークの店【Soil】

Soil 店内ディスプレイ


「仁王門通からガラス戸越しにお洒落そうな中の様子が見えて、
以前からとても気になっていました。
食器や古民具やおもちゃなど、生活空間を豊かにするような商品が揃っていますよ」

自分を活かせる場を求めて卒業後はアルバイトからスタート

Soil オーナー仲平氏
芸大出身者が自らの感性を唯一の拠りどころに、好きな仕事をしている好例がある。
仁王門通に立つ白壁の小さな北欧アンティーク店「Soil」のオーナー、仲平誠さんである。

仲平さんは、京都造形芸術大学の洋画コースで学んでいる。
卒業後は「自分が夢中になれることを仕事にしたい」と就職はせず、古いものが好きだったことから、アンティーク家具店でアルバイト生活を送っている。

商売には早くから関心があった。高校の時にはフリーマーケットの出店者に直談判してスペースの一部を間借りし、小売店の真似事を経験。
今から20年以上前の高校生が、仕入れをどうしたのか尋ねると「朝一番にフリーマーケットの会場をまわって他の店から買ってきたんです」と機知に富んだ答えが返ってきた。
親に経済的負担をかけたくないという思いが、青年の商才を磨いたようだ。

Soil オーナー 仲平氏
大学卒業後はアルバイト生活を送りながらアジアにも旅し、旅行を終えてからは、京都の古美術商に就職。
富裕層に高額商品をセールスし、わずか3年で営業のトップにのぼりつめている。
しかし、取り扱う商品が身の丈に合っていないという思いと、会社の方針とのズレから退職。
その頃ちょうど節目の30歳を迎えたことを機に、漠然と思い描いていた独立を決意。
自分の中で唯一自信のあったアンティークを扱う店の開業 に向けて動き出した。

手探りの買い付け旅行で見つけたオールドアラビア

Soil 店内の棚に並ぶオールドアラビアの食器
店内の棚に並ぶオールドアラビアの食器

初めての買い付けの旅ではデンマーク、フィンランド、フランスをまわった。
一番手ごたえのあったフィンランドの古民具を中心に扱う店Soilを始めたのは、今から約10年前のことだ。
場所は現在の仁王門通沿いではなく、紅葉の名所永観堂(東山区)の近くだった。
Soil店内
店には程なくしてファンがついたが、一回の買い付けで仕入れてきた商品の中から好きなものを選んだ客が、次また店へ足を運ぶのは新たな入荷があった時。
つまり、買い付けの回数を増やさなければ、売り上げが伸びないという状況に陥った。
しかし渡航費用は馬鹿にならず、店の運転資金も必要。経営は思ったほど甘くなかった。

それでも諦めず、日々の節約、時には日雇いの仕事もして何とか店を継続した。
苦しい日々は2年も続いたが、途中で店を辞めてしまわなかったのは「辞めてしまったらそれで終わりですし、そもそも資金も人脈も何もない人間が、すぐにうまくいくとは思っていませんでしたから」と仲平さん。
覚悟を持っての開業。そう簡単には根をあげるつもりはなかった。

買い付けの回数が増えるにしたがって店の売り上げも伸び、仲平さんが「オールドアラビア」と命名したフィンランドの陶器メーカーアラビア社の食器が認知されるようになってきた。
アラビアブランドは北欧ファンに根強い人気があり、「日本国内には1950年代以降のものがよく出まわっています」と仲平さんは話す。
店で扱うのはそれより前の時代のものが中心。これを「オールドアラビア」と位置付けた。
Soil店内
名もなき職人たちの手でつくられた無地の食器は量産され、レストランでも使われている。
初めてそれらを現地で見た時は、「日本国内で流通していた、いわゆる北欧雑貨とは違って、北欧デザインというよりも北欧工業製品という雰囲気に惹かれました」と振り返る。
同時に、自分の眼で探せば北欧にはまだまだおもしろいものがあると、この時実感したそうだ。

Soil 20世紀前期のグラスボトルなど
20世紀前期のグラスボトルなど

渡航する度に磨かれる買い付け技術、古いものと旅が好きな人生を謳歌

仕入れのための渡航は40回を超えている。
初めは、海外旅行経験の少なさから、どう巡っていいかもわからず、各国の首都を訪ねる程度だった。
ところが、5回、10回と回を重ねるごとに、買い付け方法も仕入れ先の見つけ方も上達し、今では現地で車を借りて一度に数千キロを走破して仕入れるまでになった。
店内に並ぶ、食器や古民具、おもちゃ、テキスタイルなどは、すべて仲平さんが現地の空気とともに連れ帰ってきたものだ。

Soil フィンランドで買い付けた熊の置物
フィンランドで買い付けた熊の置物
Soil 20世紀初頭の絵日記帳
20世紀初頭の絵日記帳

2018年は6回も買い付けに出たが、そのほとんど売れてしまったため、11月12日~11月20日まで再びデンマークへ渡った。
今冬はデンマークのアンティークにも出会えるだろう。

仁王門通には4年前にやって来た。
以前の店に比べるとアクセスも良く、かつてガレージとして使われていたわずか数坪の店を「自分のサイズ感と合っている」と気に入っている。
soil 店内
古いものと旅が好きな仲平さんは、途中苦しい時期はあったものの、芸大に進んだ感性をいかしながら、2つの好きなことを仕事にしている充実感を手にしている。
しかし、まだまだやりたいこともある。学生の頃から好きな古着の店を持つことも、いつかは叶えたい夢のひとつだ。

※写真の商品はsold outの場合もあります

(構成・文/古都真由美 写真/からふね屋 古都真由美)

Soil
京都市左京区仁王門通東大路西入北門前町476-1
電話:090-2357-0574
URL:http://soil-kyoto.com/
営業時間:12時~19時
定休日:火曜、木曜、不定期(買付など)

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