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京都仁王門上ル下ル

人気店を閉め、本当にやりたかった町の食堂をオープン 【Bistro L’est】

l'est 店内


「前のお店は存じ上げなかったのですが、
実は私の知り合いの方も通っていた
知る人ぞ知るお店でした」。

前身はビブグルマンにも選ばれたフレンチの店

2016年1月2日にオープンしたビストロ「l’est」は、オーナーシェフの萬木卓也さんと亜図沙さん夫妻が二人で切り盛りしている。
l'est 萬木夫妻
仁王門にあった空き物件を見つけたのは亜図沙さんだ。
それまでこの辺りに縁があったわけではなかったが、かつてのお店へ向かう途中でふと目がとまった。
かつてのお店というのは、夫の卓也さんが寺町二条で営んでいたフランス料理「ルコント」だ。

そこは飲食店の評価を星の数で示すミシュランガイドが、安くて美味しいと位置づけるビブグルマンにも選ばれ、コース料理一本でありながら、多くの食通に愛されていた。
約10年続けたその店を〝あっさり〟閉めたのは、自分がつくりたい料理との差が、日に日に開いてきてからだった。

シェフ自身が食べたいアラカルトの店で新たな一歩を踏み出す

滋賀県出身の卓也さんは、「ただ何となく入学した」という大学をやめて、料理の道に進んでいる。
料理学校で基礎を学んでから、京風フレンチで名を馳せる有名店に約9年勤め30歳で独立。「ルコント」を開業している。

カウンター席がメインの店で、修業先の影響が色濃く残るコース料理だけを提供することに、オープンしたての頃は迷いがなかった。
しかし全体のバランスを見ながら献立を決めるコース料理では、例えば活きのいいオマール海老を、ドンと迫力ある一皿にして提供することは難しい。
コースという枠組が足かせになるのだ。

そんなことを思い始めた頃に、ふとこんなことが頭をよぎるようになったという。
「僕自身が好きなのはコース料理ではなく、じつはアラカルトなんじゃないか。それを証拠に食べに行くのはいつもアラカルトの店じゃないか。
それだったら今のようなやり方ではなく、自分が本当にいいと思っているもの出した方がいいのではないか」。
l'est 萬木拓也さん
そんな逡巡が固い決心に変わってからは早かった。それからわずか半年で今の店をオープンしている。

l'est 店内
東大路通に面し格子戸越しに陽が差し込む

ここで気になるのが、すでに一定のファンを掴んでいた「ルコント」の名を変えたことだ。
「以前の店とはまったく違うので、新しい店を始めるつもりで名前を変えたんです」と卓也さん。

ただひとつ想定外のことがあった。
店の電話番号だ。新しい店でも引き継げると思っていたが、中京区から左京区への移転ではそれがかなわなかった。
移転まで何もかもがスピーディに進んでしまったために、新店の告知も充分ではない。
電話でそれを伝えられると踏んでいたが、そこが誤算だった。

ところが本当のファンの行動力とは素晴らしい。
電話番号も店名も変わってしまった店をどこからどうやって知るのか、以前の客はまたここに通い始めている。

l'est 店内
たくさんの絵やポスターの中には常連客から贈られたものもある

目の前に活きたままのオマール海老も登場!自家製ソーセージもおすすめ

メニューブックは数枚のシートがクリップで留められ、テーブルの脇に掛かっている。
多くの店はテーブル上に据え置くか、運んでくるかのどちらかで、こんな風にメニューブックを用意している店はそう多くない。
l'est テーブルに掛けられたメニュー
意外なことは他にもある。メニューブックの一枚目にある〝本日のおすすめ〟の内容が、テーブルごとに違うのだ。
卓也さんの料理の一番のファンでもある亜図沙さんの説明では、どの料理もおすすめなので、いろんなものを知ってもらおうと、それぞれに変えているのだそうだ。

l'est メニュー
本日のおすすめには亜図沙さんがピックアップした料理が並ぶ

すべて手づくりしているメニューの定番人気は、自家製ソーセージの盛り合わせ。
豚、鴨、仔羊など5種の中から3種を選べる。塩味の調整に気を配っただけに、ボリュームのある一本を最後まで美味しく食べられる。

自家製l'est ソーセージ盛り合わせ(3種)
自家製ソーセージ盛り合わせ(3種)1,400円

活オマール海老をアメリケーヌソースで食べる一皿は、注文するとまず調理前の活きた海老がテーブルに運ばれ、希望すればそのずっしり重い重量を手で確かめることもできる。そんな海沿いのレストランのようなサービスが、出来上がりを待つ楽しさに拍車をかける。

l'est 活きたオマール海老
活きたオマール海老がテーブルに運ばれる
l'est 活オマール海老 アメリケーヌソース
活オマール海老 アメリケーヌソース3,800円

他にテッド・ド・コション(豚の頭)という豚の舌・ホホ肉・耳をロール状に巻き込み分厚くカットした料理もおすすめだ。
表面はこんがりと焼かれ、ワインとの相性もいい。
季節メニューは今なら秋刀魚のコンフィもある。

l'est テッド・ド・コション
テッド・ド・コション1,600円
l'est 秋刀魚のコンフィ
秋刀魚のコンフィ1,000円

料理は定番と季節メニューが1000円前後の価格帯を中心にバランスよく並んでいる。
どれを注文しようか迷うところだが、それらすべてを試食している亜図沙さんが、自分の言葉で丁寧に説明する解説を聞いていると、意外とすんなり決められる。

自分の気持ちに素直に従い、開業から10年でまったく新しいスタイルを築いた卓也さんは「今、本当に自分がやりたかったことをしている」と話す。目指すのは地元の人をはじめとした誰もが気軽に通える〝町の食堂〟だ。
一角には、手づくりした焼き菓子も販売されている。
l'est お菓子
15時からオープンし、食事もお菓子も手掛ける頼もしい一軒は、仁王門のグルメをまた一段と豊かなものにしてくれるに違いない。

(構成・文/古都真由美 写真/からふね屋 古都真由美)

Bistro L’est(ビストロ レスト)
京都市左京区東大路通仁王門下る東門前町503-4
電話:075-771-8894
URL:https://www.bistro-lest-kyoto.com/
営業時間:15時~22時 (LO 21時)
定休日:月曜(祝日の場合は営業、翌日の火曜が休み)

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